2018年9月号


ダウンロード
わくさき通信・2018年9月号
わくさき通信・2018.9.pdf
PDFファイル 331.0 KB

わくさき通信・今月号のテキスト版です。

(民事)信託をざっくり理解する

 「信託」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。もしかしたら「民事信託」や「家族信託」という言葉なら聞いたことがあるという方もいるかもしれません。

 

 昨今、終活や遺言といった相続や相続準備について取り上げられることも多いですが、その際に「信託」という制度も一緒に紹介されていることも多いかと思います。

 今回はこの「信託」について、ざっくりご紹介をします。

 

 信託とは簡単に言えば「信頼できる人に財産を預ける制度」のことです。この信託の制度自体は戦前よりありました。しかし、制度上、一般の人には利用しにくかったためあまりなじみのないものでした。しかし、近年の法改正により一般の方でも利用しやすいものとなり、相続などの場面でも注目をされるようになりました。

 

 

 信託は先に述べたように「人に財産を預ける制度」です。そのことから信託では、財産を預ける人=委託者、財産を預かる人=受託者が存在します。

 

さらに、預けた財産から利益が生じた場合にその利益を受ける人=受益者もいます。

 つまり、信託には委託者・受託者・受益者が存在します。

 そして、いろいろなパターンがあるのですが、委託者と受託者が同じ人であっても構いません。

 例えば、父と子がいる際に、父の財産である賃貸不動産を賃料の受け取りは父のまま子に信託するとします。この場合、委託者=父、受託者=子、受益者=父となります。

 父は、すでに高齢で財産の管理に自信がありません。一方で子は今ある賃貸不動産をより有効に活用できる意欲と能力を備えています。そのような場合に信託を活用して子に財産である賃貸不動産を信託すれば、子のみの判断で賃貸不動産を利活用していくことができるのです。

 このように信託では委託者・受託者・受益者の三者が登場すること、受託者が財産を利活用してくことを押さえてください。

 

 この関係がわかると信託のいろいろな情報がわかりやすくなると思います。

(図省略)

 

法律クイズにチャレンジ!

問題:

遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言があるが、自筆証書遺言では、不動産等の財産の目録も含め全文と日付、氏名を自書し、押印をしなければならない。

 

 

こたえ:

平成31年1月12日まで → 〇

平成31年1月13日から → ×

 

今回はちょっと意地悪な問題でした。

遺言書については民法で定められていますが、その相続分やについて法律改正が予定されています。

今回の問題である自筆証書遺言の作成方法は、従前、すべての記載事項を自書しなければならないとされていましたが、法改正により不動産や預貯金などの財産については、パソコンなどで作成した財産目録でも差し支えないとされました。

 

つまり、財産目録の部分については、自書をしなければならないという要件が緩和されることになります。

 

したがって、問題文中、「不動産等の財産の目録を含め」の部分が法改正前は、法改正後は×ということになります。

 

自筆証書遺言は誰にも知られずに遺言を作成することができる反面、不動産などの財産を含む全文を自書しなければならないとされていました。その点、不動産の記載などは形式的である割には煩雑であり、自筆証書遺言の作成を妨げる原因と考えられていました。

 

 

そこで今回の法改正により、財産目録については自書の要件が緩和されました。ただし、財産目録の部分については署名・押印するものとされています。